手軽で環境にも優しいことから、トイレ詰まりの応急処置として人気の重曹。しかし、実際に試してみたものの、全く効果がなかったという経験を持つ人も少なくありません。その失敗には、実はいくつかの共通した原因が隠されています。もし重曹で詰まりが解消しなかった場合、専門業者に連絡する前に、自分の手順が正しかったかどうかを一度振り返ってみましょう。 まず最初に確認したいのが、作業を始める前の便器内の水位です。詰まりによって便器の水が溢れそうなほど溜まっている状態で重曹やお酢を投入しても、薬剤の濃度が極端に薄まってしまい、詰まりの原因にまで届きません。これでは十分な化学反応が起きず、効果はほとんど期待できません。成功の第一歩は、給油ポンプや灯油ポンプ、あるいは使い捨ての容器を使って、できるだけ便器内の水を汲み出し、通常の水位まで下げてから作業を始めることです。 次に、放置時間が短すぎるというケースもよくあります。重曹とお酢が反応して泡を出す時間は比較的短いですが、その化学作用が詰まりの原因である有機物を柔らかく分解するには、それなりの時間が必要です。泡が出なくなったからといってすぐに水を流してしまうのではなく、最低でも一時間、できれば数時間ほどじっくりと時間を置くことで、効果は格段に高まります。 そして、意外と見落としがちなのが、最後の手順である「ぬるま湯」の役割です。重曹の力で柔らかくなった詰まりを、最終的に物理的な力で押し流すのが、このぬるま湯の役目です。量が少なかったり、低い位置から静かに注いだりするだけでは、とどめの一撃にはなりません。バケツ一杯程度のぬるま湯を、少し高い位置から一気に流し込むことで、詰まりを貫通させるだけの水圧を生み出すことができます。 もちろん、これらの手順を全て正しく行っても、詰まりが解消しない場合もあります。それは、詰まりの原因がトイレットペーパーではなく、水に溶けない固形物であったり、長年蓄積した尿石で硬化してしまっていたりするからです。重曹はあくまで軽度の詰まりに対する応急処置です。一度正しく試してみて改善しない場合は、それが重曹の限界と判断し、無理せず速やかに専門の業者に相談するのが賢明な選択と言えるでしょう。