トイレで換気扇を回した時に限って便器から「コポコポ」という異音が聞こえたり、便器内の水位が少し下がったりするという現象は、換気扇による室内の空気圧の変化が原因で起こることがあります。特に高気密住宅で、換気扇の吸気量が大きい場合や、給気口が少ない場合に起こりやすいです。換気扇を強く回すと、室内の空気が急速に排出され、室内全体の気圧が外気よりもわずかに低くなります(負圧の状態)。この負圧は、トイレの排水管にも影響を及ぼします。排水管は下水道と繋がっており、下水道側の空気圧はほぼ一定です。一方、室内側の空気圧が換気扇によって低下すると、排水管内の空気も室内側に引っ張られる力が働きます。トイレの排水管のトラップ部分には封水が溜まっており、これが下水道と室内を遮断しています。換気扇による室内の負圧によって排水管内の空気が引っ張られる際、封水がその空気の流れを遮る障害物となります。空気が封水を押し分けようとしたり、封水が引っ張られてトラップ内を移動したりする際に、コポコポ、ゴボゴボといった異音が発生します。同時に、封水の一部が空気の流れに引っ張られて排水管の奥に流されてしまうため、便器内の水位がわずかに低下するという現象も起こり得ます。これは、排水システム自体に直接的な詰まりがあるわけではなく、建物全体の換気システムと排水システムが空気圧を通じて影響し合っているために起こる現象です。換気扇を止めることでコポコポ音がしなくなったり、水位が元に戻ったりする場合は、換気扇が原因である可能性が高いと判断できます。この現象が起こるからといって直ちに深刻な詰まりが発生しているわけではありませんが、頻繁に発生する場合は、排水管内の空気圧のバランスが崩れやすい状態にある、とも考えられます。換気扇による影響を軽減するためには、給気口を適切に設けて室内の空気の出入りをスムーズにする、換気扇の運転強度を調整する、あるいは排水管内に通気弁を設置するといった対策が考えられます。ただし、これらの対策は専門的な知識が必要となる場合もあるため、建築業者や設備の専門業者に相談することをおすすめします。